RICK PARTINGTON / EYEEMGetty Images
この記事をざっくり説明すると…
- オーストラリアのウェブメディア「The Conversation」によると、タンパク質を多く含む小型の水草「ウキクサ」が、宇宙でも栄養価の高い食事を摂るための鍵になるかもしれないとのことです。
- 研究者たちは、長期の宇宙ミッションでどの植物を栽培すべきかについて研究を続けています。
- 国際宇宙ステーションでは、すでに宇宙飛行士たちがレタスやケール、キャベツなどの多種多様な植物の世話をしています。
英語で「Duckweed(ダックウィード)」と呼ばれ、日本では「ウキクサ」と訳される植物があります。池や水槽でも見かけることの多いこの小さな水草の一種は、タンパク質を多く含むことから「その栄養価の高さから、新たなる宇宙食として有用かもしれません」という内容で、オーストラリアのウェブメディア「カンバセーション(The Conversation)」で発表されました。その記事の筆者は、コロラド大学ボルダー校の植物生態学と分子生物学のバーバラ・デミグ-アダムス教授です。
NASAと、カリフォルニア工科大学・マサチューセッツ工科大学・ベイラー医科大学の研究者からなる共同研究「トランスレーショナル・リサーチ・インスティテュート・フォー・スペース・ヘルス(Translational Research Institute for Space Health)」では、バーバラ・デミグ-アダムス教授と彼女の研究室と共同で植物にまつわる調査を行いました。その内容とは…、「宇宙飛行士が宇宙船の中の限られた資源の中で育てることができる、栄養価の高い植物」を探すという難問でした。
そして、その解答となる植物こそ、「ウキクサ」だったのです。
池や水槽でよく見かけるウキクサは、世界で最も成長スピードの早い植物のひとつで、タンパク質が豊富な植物です。これは、太陽系の外で活動をすることになるかもしれない将来の宇宙飛行士にとっても、朗報と言えるでしょう。
ウキクサは、宇宙飛行士が身体に浴びる太陽熱の放射線や宇宙線(宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線のこと)による悪影響に対しても、役立つ可能性が指摘されています。
それはウキクサには、(緑黄色野菜などに多く含まれる黄色の天然色素であり、「天然のサングラス」とも呼ばれる)「ルテイン」や(青色光などから網膜保護をする働きがある他、コントラスト感度を高める作用もあることが報告されている)「ゼアキサンチン」といった高い抗酸化力を有する成分を豊富に含むことから、目の健康(宇宙飛行士にとって特に重要な関心事です)をサポートしてくれることが、大いに期待できるのです。
ですが、障害もあります。宇宙空間でウキクサを栽培する上で困難となるのは、他の多くの植物と同様に、生産性と栄養分を最大化させるために適切な条件を整えることになります。ウキクサは研究により、豊富な抗酸化物質を生成するため大量の光を必要とする植物であることが報告されています。地球では簡単なことかもしれませんが、宇宙空間にいる宇宙飛行士にとっては、これはかなり大きな挑戦となるはずです。
何年もの間、国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する宇宙飛行士たちは、その園芸の腕前を遺憾なく発揮し、小振りな葉物野菜の栽培を行ってきました。その中に、ウィスコンシン大学による「アドバンスド・アストロカルチャープロジェクト(The Advanced Astroculture Project)」というプロジェクトがあります。これは、「微小重力が植物の成長に及ぼす影響」を解明することを目指す取り組みの一環で、そこで栽培されたシロイヌナズナ(マスタード植物の一種)や大豆などの植物はすでにISSへも送られています。
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ちなみに、このような実験は日本も行っています。大阪市立大学名誉教授であり富山大学客員教授でもある神阪盛一郎氏が代表研究者として、富山大学理学部唐原研究室とともに「微小重力環境における高等植物の生活環」という植物を使用したはじめての長期生育実験(SpaceSeed)をISS内の日本実験棟「きぼう」で行い、2009年11月11日に終了したことが報告されています。
植物が宇宙飛行士の食生活において役立つだけでなく、植物の世話をすることで、宇宙空間にあっても心理的幸福感を味わうことも可能となる趣味にもなっています。NASAのスコット・ケリー宇宙飛行士は、地球上空250マイル(約402キロメートル)上空で、百日草の花束の写真をツイッターで投稿したこともあります。
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いくつかの研究室では、宇宙空間での成長を促すために、実際のゲノム植物に手を加えています。ニューヨーク州にある生物学・医学の研究および教育を目的とする民間非営利財団による研究所であるコールド・スプリング・ハーバー研究所の研究者チームは、スペース節約のために、短いつるの上にぎっしりと詰まった房の中で成長するチェリートマトを開発しました。
バーバラ・デミグ-アダムス教授らは、現在もウキクサを育てるための最良の方法を探っている最中で、「まずは無菌の水の中で植物を育て、次は微生物を導入する実験をする」と意気込んでいます。
また、研究チームは光を好む植物をさまざまな照明条件の下で育てることで、最低限必要とする照明量の解明にも乗り出しています。その研究によると、光の強度が弱い環境下においてもウキクサは、同じような植物よりも多くの「ゼアキサンチン」を産生することが判明しているとのことです。
From POPULAR MECHANICS
Translation / Esquire JP
※この翻訳は抄訳です
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