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<ふくしまの10年・追われた土地の記憶>(10)年を取っての再挑戦 - 東京新聞

「村に人を集めたい」とヤギに期待する鎌田毅さん=葛尾村で

「村に人を集めたい」とヤギに期待する鎌田毅さん=葛尾村で

 東京電力福島第一原発事故による葛尾村の避難指示は帰還困難区域を除き、二〇一六年六月に解除された。五年間の避難生活が村の人たちにとってどんな年月だったのか考えさせられる「特産品」が、村の復興交流館「あぜりあ」の特産品のコーナーに並んでいた。

 足つぼマッサージのための木製の棒などの道具。村出身の中島道男さん(65)=三春町=が避難生活の中で作り始めたと、あぜりあの関係者が教えてくれた。

 中島さんに電話した。避難先を転々とする中で、マッサージの技術を身に付けたという。仮設住宅できゅうくつに暮らす人たちなどの役に立てればという思いだった。お店に来られない人たちのために思い付いたのが足つぼマッサージの道具作りだった。

 十月時点で村に帰った人は三百二十七人。事故前の人口は千五百人を超えていた。鎌田毅さん(77)ら開拓農家が暮らした大笹地区も事故前は二十四軒あったが、戻ったのは四軒という。仮設で亡くなった人たちが何人もいる。「動いていれば酒うまいけど、やることないと酒ばかりになる。酒好きが飲めなくなると終わりだな」

 鎌田さんは村の有志とともに、ヤギを新たな観光資源とするための会社を作った。「村おこしでヤギやろう、ヤギいいんでないの、って話に新春バレーボール大会の後の反省会で盛り上がった。酔いさめてから不安になったけど」

 牧場では、数十頭のヤギたちがにぎやかに鳴いていた。身ごもっているヤギも何頭かいた。乳でせっけんを作り始めている。

 事故前に養豚をやっていた時に心に決めていた定年は七十五歳。それを超えての新たな挑戦となる。 =おわり (早川由紀美が担当しました)

 ◇8日から新シリーズを始めます。ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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