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ゾルゲ事件に連座「ミス・ソシアリスト」九津見房子の生涯描く 岡山の詩人が出版 - 毎日新聞 - 毎日新聞

完成した評伝を手にする斎藤恵子さん=本人提供

 戦前、日本初の女性社会主義団体を結成し、国際的スパイ事件「ゾルゲ事件」にも連座した運動家・九津見房子(くつみふさこ)(1890~1980年)。岡山高等女学校(現、岡山県立岡山操山高)の後輩に当たる詩人・斎藤恵子さん=岡山市南区東畦=がその生涯を「九津見房子、声だけを残し」(みすず書房)にまとめた。著作を残さず、忘れられがちだった房子の肉声は時を超えて響き、良心に従ったひとすじの道が浮かび上がってきたという。【松倉展人】

 房子は岡山市弓之町(現、北区弓之町)で生まれた。勝山藩家老職の家柄。幼児期にキリスト教に触れ、生家が近かった社会運動家・福田英子(1865~1927年)にも深く関心を寄せて育つ。女学校4年のとき、同市であった社会主義講演会で倉敷出身の運動家・山川均(1880~1958年)と知り合い、置き手紙で山川から「ミス・ソシアリスト(社会主義者)」と呼ばれる。まもなく上京。山川に憧れを抱き、ソシアリストとして歩もうとした。

父祖の地・真庭市勝山にある九津見房子の墓=斎藤恵子さん提供

 英子の家に一時身を寄せ、堺利彦、幸徳秋水、内村鑑三、徳富蘆花、大杉栄ら多くの運動家、知識人と出会う。30歳となった1921(大正10)年、第2回メーデーに参加するため、女性だけの団体「赤瀾会(せきらんかい)」を結成。「赤いさざなみ」を意味した会の名付け親でもあった。

 「これが日本で女が最初に参加したメーデーです」(聞き書きに残した房子の言葉)。非合法下のメーデー。ほとんどの会員が検束され、新聞にその模様が伝えられた。会はやがて自然消滅。斎藤さんは「少人数の運動ながら、女たちの意気を全国に知らせることができた。これだけでも十分意味はあった」と語る。

 思想弾圧が続く中、多くの労働運動、産児制限運動に参加した房子。28(昭和3)年、治安維持法で女性初の検挙者となり、4年間服役する。さらに41(昭和16)年、「ゾルゲ事件」で逮捕される。反戦運動家の画家、宮城与徳(43年に獄死)の情報収集活動を手助けしたとして懲役8年の判決を受け、終戦後の45(昭和20)年10月に釈放された。

 事件について「それまでにコミンテルン(国際共産主義運動の組織)の批判はずいぶん聞いていましたけれど、世界でただ一つの社会主義国を守るために役立つなら、わたしは小さな力でも、それに捧(ささ)げたいという気持ちがありましたからね」と語ったという。

 元高校常勤講師の斎藤さんは現在、県詩人協会会長。これまで6冊の詩集を刊行し、うち「無月(むげつ)となのはな」で2009年、日本詩人クラブ新人賞、第50回晩翠賞を受賞した。今回、評伝のために当時の文献、新聞資料を読み込むにつれ、貧しい中でも身だしなみを忘れず、どんな相手にも親切に温かく接した房子の姿を身近な人物のように感じてきた。戦後は多くを語ることのなかった房子だが、「沈黙には人間の持つ深みがある。私はその沈黙をいとおしく思う」とつづっている。

 同書は税別3600円。

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August 21, 2020 at 11:14AM
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