
エリック・ブランカ著
忖度が生み出す 独裁者の二面性
評 高瀬毅(ノンフィクション作家)
「ヒトラーは平和主義者だった」と言うとバカにされるのがオチだろう。だが第2次世界大戦が本格化する以前、1923年~40年にかけて、ヒトラーは盛んに外国メディアに対して「平和」を強調していた。
「われわれは歴史を通じてフランスとはいざこざが多くあったが、それでもなお、われわれが同じ家族の一員だということには変わりはない」(38年9月、仏紙「ル・ジュルナル」)。
米英仏、ことに仏メディアを中心に、ヒトラーへのインタビュー16件を子細に検討した本書は、ヒトラーの意外な顔を浮かびあがらせる。むしろ「人たらし」ですらあるのだ。おぞましきナチの犯罪を生んだ悪は、いったいこの人物のどこに潜んでいるのかとさえ思わせる。著者は、「ル・ジュルナル」でインタビューした作家、シャトーブリアンが、ヒトラーの中に「イエス・キリストの生まれ変わりを認めている」とも分析し、彼の記事を紹介している。「ヒトラーは善人である。子どもたちのなかにいる彼を見ればいい。彼が愛した人々の墓の前で、頭を垂れている姿を見ればいい。彼は非常なる善人だ」
美しき錯誤とも言うべき記述。しかし彼だけでなく、著名なジャーナリストたちもくつわを並べてヒトラーの人間的魅力を礼賛していたのである。
なぜなのか。急速に欧州の中心的存在にのし上がった権力者に会見できるという栄光の為せるわざなのだ。どれほど危険な人物であろうと、独裁者への会見は、表現者にとって魅力と価値がある。インタビュアーに選ばれたことによって「忖度(そんたく)」し、真実から目を背けた。もちろんヒトラーはそれをわかった上で、取材者を「厳選」した。対外的なイメージ操作のためだ。
どこかで聞いたような話ではないか。権力者との会食が常態化し、ジャーナリズムの役割を忘れてしまった大手メディアの記者たちがいる。どのような結末を迎えるのか。歴史の教訓を思い起こせばわかる。苦味がこみ上げてきた。(松永りえ訳/原書房 3960円)
<略歴>
1958年生まれ。フランスの歴史学者、ジャーナリスト。週刊誌の記者、編集長を務めた
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June 14, 2020 at 02:30AM
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<書評>ヒトラーへのメディア取材記録:北海道新聞 どうしん電子版 - 北海道新聞
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