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宇宙船? キュートなスタイルの初代「シボレー・コルベット」 - 朝日新聞

アメリカのスポーツカーである「シボレー・コルベット」。長い歴史を持つスポーツカーとして、他に類がない。ここで紹介する初代は1953年に発表された。私はこのちょっとキュートなスタイリングが好きである。

(TOP画像:チラ見えしている赤い内装が特徴的な53年型)

コルベットのスタートは順風満帆ではなかったようだ。そもそも、シボレーの内部で、戦後なんどもスポーツカーの企画がもちあがったが、“いまはまだその時期ではない”と企画が立ち消えになっていた。

一般消費者向けにコンセプトカーを展示するゼネラルモーターズのショー「モトラマ」に最初に出展されて好評だった

一般消費者向けにコンセプトカーを展示するゼネラルモーターズのショー「モトラマ」に最初に出展されて好評だった

背景には、ベビーブームがあった。若者が復員してきて結婚し、子どもを作っていた時代には、3人4人乗れるクルマは売れても、2人乗りのスポーツカーには市場性がない、という見方が強かったからだ。

それでも当時の責任者はあきらめずに模型を作り、社内上層部へのプレゼンテーションを重ねた。最終的に、のちに初代へと発展するかたちが魅力的だったので、当時の経営者の心を動かし、一度はやってみるか、と計画がスタートしたのだった。

53年当時はほとんど手作り(手前右に95キロしかない軽量フロアパンが積んであるのが見える)

53年当時はほとんど手作り(手前右に95キロしかない軽量フロアパンが積んであるのが見える)

これを、現代の自動車史の書籍では、“ビーンカウンター(財務)が幅を利かせていなかったよき時代”と評していることが多い。クルマ好きの気持ちが、市場性のはっきりしないプロジェクトにゴーサインを出したからである。

当時、米国の自動車産業は資金が潤沢で、そこでデザイナー(という概念はまだ生まれていなかった)は花形職業のひとつだ。欧州から、例えばナチの迫害を逃れて亡命していたひとを含めて、有能な人材がひしめいており、出来上がったクルマは長いノーズと美しい曲面を持つ印象的なスタイルになった。

いまだったら強度の問題で採用できない、いわゆるラップアラウンド型のウィンドシールドも、未来的でかっこよかった。私は(リアルタイムではないが)子どものころ、初代コルベットの写真をみつけて、宇宙船? と思ったほどだ。

6気筒搭載モデルはテールフィンが生えていた

6気筒搭載モデルはテールフィンが生えていた

現代まで続くコルベットの特徴とは、FRPのボディーにV8エンジンというものだ。軽量な車体が作れるFRPはシボレー(あるいはその上に位置するゼネラルモーターズ)にとって画期的な素材だった。

V型8気筒エンジンも、ついにフロントでなくミドシップマウントが採用された、2019年発表の最新型コルベットでも引き継がれている。欧米のメーカーにとって、エンジンがクルマの象徴という証左だ。

ただし初期型には、コンパクトなV8エンジンの開発が間に合わなかった。53年モデルと54年モデルには、排気量が米国表記で235キュービックインチ(3850cc)の直列6気筒エンジンが搭載された。

53年は350台しか作られなかった

53年は350台しか作られなかった

年季の入ったエンジンで、手を入れても、115馬力を150馬力程度まで引き上げるのが精いっぱい。かつ、変速機は2段オートマチックで、“なぜマニュアルではないのか”と、非力さとともに、批判の対象になった。

実際セールスははかばかしくなく、53年は350台生産されて売れたのは180台。54年に生産台数は3640台へと増加したものの、3分の1が売れ残ったとか。

セールスが好転したのは、55年に265キュービックインチ(4343cc)のV型8気筒エンジンが搭載され、買う価値のあるパワフルなスポーツカーと評価が定着してからだ。

シボレーでは、6気筒モデルもV型8気筒モデルも第一世代の「C1」にくくっているけれど、上記のようにエンジンが違い、まったく異なるクルマだと私は考えている(C1を“固定式リアサスペンションのシャシーを持つ世代”とするくくりかたもある)。

ヘッドランプが割れるのを防止するストーンガードがレースカーを彷彿(ほうふつ)させる54年型

ヘッドランプが割れるのを防止するストーンガードがレースカーを彷彿(ほうふつ)させる54年型

スタイリングも、55年のV8搭載モデルからは大きく変わった。ノーズがぐっと低くなり、車体側面にえぐったような曲線のキャラクターラインが入れられ、テールフィンが取り除かれたのだ。別の見方をすれば、メルセデス・ベンツのような欧州車へのコンプレックスが強く出た感もある。

シンプルなラインで力強さを感じさせるという点では、初代のV8モデルを“名車”とする自動車史観に異を唱えるつもりはない。でも私としては、ロケットのようにテールフィン生やして、航空機を思わせるラップアラウンド型のウィンドシールドを備えた6気筒モデルの、遊び心を感じさせるスタイルは捨てがたい。

(写真=Chevrolet提供)

【スペックス】
車名 シボレー・コルベット(53年型)
全長×全幅×全高 4248×1834×1308mm
3850cc 6気筒 後輪駆動
最高出力 150馬力

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PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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