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マスクの感染防止効果、一部専門家は疑問視 - ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

マスクの感染防止効果、一部専門家は疑問視 - ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

 中国で新型コロナウイルスに対する警戒感が拡大するにつれて、店頭やオンラインストアでマスクの売り切れが続出している。中国の少なくとも2省では、公共の場でマスクを着用することが義務づけられた。国内のマスク工場は需要を満たすため24時間稼働している。

 しかし、医療専門家は、コロナウイルスの拡大を防ぐ上でマスクの効果は限られていると話す。一般の人たちが着用しているマスクの多くは防護効果がほとんどなく、たとえ最も効果の高いマスクであっても、顔に密着させ、正しく着用しなければ意味はない。

 マスクの着け心地が悪くなり、顔や汚染されている可能性のあるマスクを頻繁に触ることになれば、逆効果にさえなり得る。

 「こうした環境下でマスクの着用によって身を守れる確率は極めて低い」。米エモリー大学病院の重大伝染病部門で医療責任者を務めるブルース・リブナー氏はこう話す。「マスクを着用することはある意味、着用しないよりも悪い場合がある」

 医療専門家によると、感染を防ぐ最善の方法は手をこまめに洗い、目や口、鼻を触らないようにすることだ。

 それでも中国内外でマスクの入手は困難になっており、アマゾンなどの通販サイトで売り切れが生じている。病院や医療センターはマスク不足に陥っている。そうした場所では日々、コロナウイルス感染患者への対応だけでなく、他の感染症や外科手術、基本的な治療に何百万枚ものマスクを必要とする。

 リブナー氏によると、エモリー大学病院では、必要に応じて医療用品を購入している他の医療センターから、余分なマスクがないかどうかを尋ねる電話を毎日受けるという。

湖北省で2週間わたる隔離生活を送るWSJの記者2人に話を聞く(英語音声、英語字幕あり)Photo: Arek Rataj/Associated Press

「専門家より政府の言うこと聞け」

 マスクの主要供給会社の1つ、米スリーエム(3M)は感染拡大を受けて増産を行っていると述べた。

 またマスクや手術衣、手術用被布を製造する中国の仏山市南海必得福無紡布は、湖北省政府が設定した需要を満たすため、24時間操業しているという。

 中国当局は、どのようなマスクでも着用する価値はあると依然考えていると話す。ウイルスの発生源である武漢市の南東に位置する江西省では、各自治会は住民にマスクを着用せずに公の場に出掛けるのを避けさせるよう指示を受けていると、省衛生健康委員会のホットライン担当職員は述べた。

 「大勢の人が行き来したり、集まったりしている場所での交差感染を防ぐためだ」と同職員は言う。

 また武漢市が位置する湖北省の同様のホットラインの職員は「専門家が言うことを信じては行けない。まず政府の言うことを聞くように」と語った。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、80万人以上が利用する医師向けの世界的なソーシャルメディア(SNS)「SERMO(サーモ)」で質問したところ、回答した医師827人のうちの66%が、医療訓練を受けていない平均的な市民にとって、コロナウイルスの感染を防止するために医療用マスクを着用することは、何もしないよりも効果があるが、最も効果的な手段ではないと答えた。また15%の医師はマスクの着用は効果がないと述べた。

 マスクの不足を受け、多くの人たちが身近にあるもので代用し始めている。黒竜江省ハルビン市に住むフリーランスで働くチー・チーさん(20)は、外出する際にはピンクのポリウレタン製マスクを着けている。それが病気を防ぐ専用のマスクでないことは承知の上だ。

 「ハルビン市でちゃんとしたマスクを見つけられなかった。あらゆる場所で在庫切れになっている」とチーさんは話し、「何も着けないよりはましでしょう?」と述べた。

適切に着用しなければ意味がない

 衛生専門家によると、コロナウイルスなどの呼吸器系疾患の原因となる病原体は目や鼻を介して感染する確率が最も高い。せきやくしゃみによって感染した飛まつがどこかの表面に付着し、それを触った健康な人がウイルスを拾い、その後で自分の顔に触れることで感染する。

 そのような飛まつは通常、表面に付着してから1~4時間は残る。手をこまめに洗い、顔に触れないように医療専門家が勧めるのはそのためだ。

 マスクは適切に使用すれば、くしゃみやせきの大きな飛まつの一部は遮断できる。また、気をつけていれば、鼻や口を触るのも防げる。しかし、サージカルマスクとして知られる紙やポリウレタン製マスクでは微小な粒子は排除できない。

 最も効果が高いと一部でみなされているのが、「N95」マスクとして知られる再利用可能な防護マスクだ。ただし、専門家がきちんと調整した場合に限る。そのような場合であれば、ぴったり密着して粒子を通りにくくしてくれる。こうしたマスクの価格は高騰しており、さまざまな通販サイトが値上げしないことを約束している。

タイで布製のマスクを選ぶ女性。コロナウイルスによる感染拡大でアジアを中心にマスク着用への社会的圧力が高まっている Photo: madaree tohlala/Agence France-Presse/Getty Images

 しかし、多くの人はマスクを適切に着用していない上、マスクの多くは1回に何時間も着けることを想定したデザインになっていない。長時間着けようとすると大抵の場合、着け心地が悪くなり、位置を調整しようとして顔を触ってしまう。

 米マウント・サイナイ・サウス・ナッソー病院内科部門責任者で米感染症学会の広報担当者を務めるアーロン・グラット氏によると、医療専門家の間で一般的にN95マスクを着用するのは、はしかなどの空気感染するウイルスに対応する医師だけだ。コロナウイルスは概して、空気中に長く漂わない比較的大きな飛まつで感染することが多い。

 しかも「それ(マスク)をカバンに入れた場合、カバンに入っている物全てを汚染する可能性もある」とグラット氏は話す。

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2020-02-03 03:20:00Z
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