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宮沢賢治の宇宙観はアインシュタインを超えていた - 谷口 義明|論座 - 朝日新聞社の言論サイト - 論座

『銀河鉄道の夜』から見える「躍動する宇宙」の先見性

谷口 義明 放送大学教授(銀河天文学)

拡大2002年12月、「いわて銀河鉄道」の開業を記念して一戸駅前に作られた「銀河鉄道の夜」にちなんだイルミネーションと宮沢賢治(左)とアインシュタイン(右)
 宮沢賢治は、明治の終わりから大正にかけて、みちのくの小都市、花巻でありえない活躍をした人だ。1896(明治29)年に岩手県稗貫郡里河口村(現在の花巻市)で生まれ、1933(昭和8)年に急性肺炎で死去するまで、37年の間に多数の短歌、詩、童話を遺した。それらが21世紀の今も読み継がれている。賢治が膨大な科学知識を持っていたことは論座「サイエンティストとしての宮沢賢治」で詳しく解説されている。私は賢治ファンの天文学者として、賢治の宇宙観はアインシュタインを超えていたかもしれないと感じている。なぜそう感じるのかを、これから書いていきたい。

アインシュタインが考えた宇宙は「時間変化しない」

 ドイツ出身の物理学者アルベルト・アインシュタイン(1879-1955)はたった一人でニュートン力学を乗り越えた人だ。光の速度はどこでも同じである(秒速30万キロメートル)。この仮定だけから特殊相対論を構築し、空間三次元と時間一次元(四次元)がお互いに助け合って光速度一定を実現していることを明らかにした。1905(明治38)年のことだ。

拡大太陽の周りを公転運動する地球。ニュートン力学では地球と太陽の間に働く万有引力でこの運動を説明する。しかし、一般相対論では太陽の質量で時空が歪み、地球はその歪みに沿って移動しているだけになる=『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』谷口義明、光文社新書、2019年;図1-3を引用

 また、重力の効果と加速度運動の効果は同じであることに気がついた(等価原理)。1916(大正5)年、この原理に基づいて一般相対論の構築に成功した。これは重力の理論で、そのエッセンスは「時空は物質に移動の方法を教える。物質は時空に曲がる方法を教える」(右図)である。結局のところ、ニュートン力学は物体の運動速度が光速度に比べて十分遅い場合、近似的に正しい理論体系だったのだ。かくして、アインシュタインは20世紀初頭に、物理の世界を一変させた。

 そのアインシュタインだが、宇宙の本質は見誤っていた。彼は、宇宙は「一様」で、「どの方向を見ても同じように見える(等方)」と思っていた。つまり、宇宙には特別な場所はないということだ。彼は、さらに宇宙は「時間変化しない」と信じていた。これは当時としては自然な発想だった。なぜなら、夜空を眺めれば、そこは静穏な世界に見えるのだから。

 ところがアインシュタインは驚愕することになる。彼の構築した一般相対論は宇宙の様子を調べる方程式(アインシュタイン方程式)を与えてくれた。それを解いてみたところ、静穏な宇宙を示す解が存在しないのだ。膨張するか、収縮するか。そのいずれかなのだ。悩んだアインシュタインはひとつの項を加えた。宇宙項、あるいは宇宙定数と呼ばれるものだ。こうすれば形式的には静穏な宇宙に至る解が出てくる。ただし、針のてっぺんにあるような解なので、安定な解ではない。それでもアインシュタインは安心した。

『銀河鉄道の夜』に表れた宇宙観

 では、話を賢治に移そう。賢治の抱いていた宇宙観は、彼の代表作として名高い『銀河鉄道の夜』にみることができる。この物語は、タイトルだけから想像すると、天の川の中を銀河鉄道に乗って旅をする楽しい物語だと思いがちだ。しかし、これは死出の旅路なのだ。

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January 14, 2020 at 08:02AM
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